理事長ご挨拶

理事長 坂元 茂樹
人権文化の創造をめざして
1994(平成6)年に文部省認可の研究財団として世界人権問題研究センターがスタートしてから、28年余の歳月が過ぎました。その間、2012年には内閣総理大臣認定の公益財団法人へと移行し、研究活動を続けてきましたが、より現代的な人権課題に対応するため、2018年度に「常設型研究チーム」から「プロジェクト型研究チーム」へと研究部門を改編するとともに、新たに「登録研究員制度」を設け、研究員間のネットワークや研究の継続性を確保し、チームリーダー・専任研究員・嘱託研究員あわせて100名余の研究者によりリスタートし、時宜にかなったテーマを設定して研究を進めています。
共同研究・個人研究の調査と研究の成果は、『世界人権問題研究センター年報』および『研究紀要』に集約するとともに、当研究センター主催の「人権大学講座」をはじめとする講座や季刊誌『GLOBE』、さらにはエキスパート・コメントなどにも反映させ、府民・市民のみなさまへの分りやすい情報発信にも努めています。
財団法人世界人権問題研究センターが京都に創設されたのは、平安建都1200年記念事業のひとつとしてでした。京都の歴史と文化は、人権文化の創造と深いかかわりをもっていたにもかかわらず、明治の平安建都1100年の記念事業では、残念ながら人権問題に対する認識はきわめて不十分なものでした。その課題を受け継いで平安建都1200年記念事業においては、世界人権問題研究センターの設立が不可欠とされました。こうして設立された世界人権問題研究センターは、これまでの調査・研究活動の成果により、日本のみならずアジアにおける人権問題研究の貴重な研究組織として、国内外から高い評価を受けるに至っています。
21世紀は人権の世紀といわれていますが、人権問題に対する地道な研究を通して、人権問題を解決するための実践力を一人ひとりが培わなければ、21世紀を人権の世紀として構築することはできません。こうした中、2022年2月24日、ロシアによる「特別軍事作戦」と称するウクライナ侵攻が始まり、ウクライナの人々の平和な日常が全土で奪われる事態が生じました。戦争は人命を奪う最もひどい人権侵害です。
世界人権宣言(1948年)は、「人類社会のすべての構成員の固有の尊厳及び平等で奪い得ない権利を認めることが世界における自由、正義及び平和の基礎をなすものである」(前文)と述べて、人権の保障が平和の基礎であるとしています。
世界人権問題研究センターは、さらなる人権研究の充実に取り組み、すべての人々が、さまざまな困難を克服して、お互いに人間としての尊厳と権利を尊重し合い、「誰一人取り残さない」形で一人ひとりが幸福を求めて生きることのできる多文化共生社会の実現に貢献してまいります。
2022(令和4)年7月