移住者と人権プロジェクト

プロジェクトの概要

  • 2020年02月20日

研究の概要

 21世紀のグローバリゼーションを象徴する一つの現象が人の国際移動(中東・アフリカ諸国からの近隣・欧州諸国への難民・移民の大量移動、中南米諸国から米国へのキャラバンなど)であるが、その原因は多様であり、国際社会が対処すべき問題も多様である。日本では近い将来の労働人口減少に対処すべく外国人労働者の受け入れ拡大政策が始まり、在留資格の拡大等を含む出入国管理法制の改正がなされた。本研究は、人の移動に伴う国際法上の諸問題を整理するとともに、特に「移住労働者権利条約」及び関連諸条約(ILO諸条約など)ならびに人権理事会等国際機関が設定し又は設定しようとしている移住労働者及びその家族等の取扱いに関する国際基準の構造と問題点、ならびにそれを実施しようとした場合に生じうる国内法制上の諸問題を分析・解明し、移住労働に伴う国際人権保障の方向性と理論化をはかることを目的とする。さらに移住者の実際の労働・生活現場となる地方公共団体における実態分析を踏まえて、移住労働者及び家族に対する国際人権基準の国内実施の在り方について課題と対処方法について理論的、実務的検討を行う。

研究の背景

 日本に一定期間暮らす外国籍者は、その在留資格を問わず「住民」であり、地方公共団体の実務の現場で見れば「府民」「市民」である。「外国人労働者」という側面だけでみるのではなく、「人の国際移動」に伴う人権課題をグローカルな視点で分析するとともに、すでにいる、そしてこれから入ってくる外国籍者(移住者)を「移住労働者とその家族」という枠組みで捉え、可能なものについては提言を行うことを目指している。「移住労働者」とは、「移住労働者権利条約」(日本未批准)の定義においては、「自らの国籍国以外の国において報酬を受ける活動に従事しようとしているか、現にしているか、又はしたことのある者」をさしており、正規滞在者も非正規滞在者も基本的人権は保障されることを前提としている。

 世界的な文脈としては、「人の国際移動」の要因や背景は多様化・複雑化し、移動の大規模化・恒常化とも相まって、一つの地球的規模の問題として、その移動プロセスや移動先での人権問題への懸念と対応への関心が急速に高まっている。日本社会も、直面する人権課題から目を反らすことはできない。日本では総人口、生産年齢人口ともに減少が進むなか、2019年度から外国人労働者の受け入れと在留管理の体制が大きく更新され、「労働力を今後確保できるか」あるいは「外国人労働者を受け入れることに伴う困難」という観点が強調されがちである。しかし、旧植民地出身者はもとより、過去30年来増えてきた「外国人労働者」についても、社会生活をおくる上でのさまざまな基本的な権利保障のための基盤整備の歩みは、遅々としている。

プロジェクト経緯

2018年4月  プロジェクトチーム5「移住者と人権」(2021年4月より登録チーム7に移行)

2019年4月  研究課題「移住労働者とその家族の国際人権保護基準に基づいた法基盤整備の総合的研究」(基盤研究(B) 2019年度~2021年度)

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