プロジェクトチーム2
共に生きる地域研究の可能性
本研究は、これまでの世界人権問題研究センターにおける歴史学や社会学などの分野による研究活動の成果を踏まえ、より学際性と普遍性、さらには今後に向けての継続性を考えてテーマ設定したものである。「地域研究」とは、ある地域を歴史的視点だけではなく、政治・法・経済・文化・社会・医療・土木・産業・交通などの多角的な視点から分析することを意味している。また、対象地域には被差別部落を含むが、研究対象を部落問題に限定せず、むしろ史料研究を中心に据えることで、在日朝鮮人や女性、障害のある人など多様な存在を視野に入れることが可能になると考える。
地域社会の多様なあり方を明らかにする上で格好の地域として、京都最大の被差別部落を含む地域(崇仁地区・本町通及びそれに隣接する鴨川流域一帯)を対象とし、その地域に関わる中世から近代初頭にかけての文書群(今村家文書)を素材として取り上げている。本研究では、今村家文書に関係する過去20年間の研究成果を継承し、さらに人権の視点から掘り下げるとともに、その成果の発信と市民への還元にも取り組んでいく。また、そうした古文書の読み解きや議論を対象地域に関わるさまざまな人々と実践することで、新しい研究のあり方を模索している。
これまでの研究では、今村家文書をはじめとした諸史料の撮影・整理・翻刻を進めるとともに先述の「地域研究」の枠組みどおり諸々の専門分野の研究者等から、本研究に関係する研究報告を受けてきた。それにより、対象地域の歴史や社会構造を一層明らかにしてきた。成果の一部は、当センターの研究紀要等でも発信している。そうした作業を行うなかで、差別の社会的側面や差別と関係する史料の取り扱いについても議論してきた。
今後はこれまでと同様の研究を展開しつつ、研究対象としている地域に当センターが移転することからも、移転先の研究対象地域内にある柳原銀行記念資料館の展示企画に協力し、適時、研究成果を発信するとともに、市民向けの事業として、対象地域の歴史と現状を盛り込んだパンフレット制作などに協力していきたい。
研究員名簿
役職 | 氏名 |
---|---|
リーダー | 井岡 康時(奈良大学文学部教授) |
リーダー | 小林 丈広(同志社大学文学部教授) |
専任研究員 | 小林 ひろみ(世界人権問題研究センター研究員) |
嘱託研究員 | 秋元 せき(京都市歴史資料館歴史調査員) |
嘱託研究員 | 関口 寛(同志社大学人文科学研究所教授) |
嘱託研究員 | 廣岡 浄進(大阪公立大学人権問題研究センター准教授) |
嘱託研究員 | 山内 政夫(柳原銀行記念資料館事務局長) |